ゆらぎ(よるむらさき)/木立 悟
望まれない者にも
見放された者にも
めぐりはめぐり来て
伝えることも
受け取ることもない季節に
雲の刃はやわらかく起き上がり
道の記憶を射るように照らす
空は醒め
翼が生まれ
川のかたちに沿い 鳥は降り立ち
見つめる黒い瞳のなかで
黒を消し去る歌を歌う
張りつめた夜のなかを
次々とやって来ては光を曲げる
冷たい音の鳥たち
真新しい家なみが尽きるところに
白く埋もれた草地がひろがる
眠る黄金のまわりから
紫色の炎があらわれ
高く高く何本も
夜空に届きそうで届かない
細い柱になってゆく
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