はじまりの言葉/成澤 和樹
今の今まで、
自分の口から出た言葉は、
自分の言葉であると思っていた。
定型の、お決まりの文句以外は、そうであると。
たとえばそれが詩であったり、
文学であったり、などと。
だがしかし、
結局は、
容易に分解されていくような私の言葉は、
借り物だった。
この子らも全て、借り物だった。
この、子ら、も、全て。
借り、物、だっ、た。
思想があったとしても、
心がこもっていたとしても。
そこから旅立ちたい。
これからは。
きっと。
未だ耳にしたことの無い言葉で、
心したことのある世界を、気づかせたい。
未だ目にしたことの無い言葉で、
心したことのない世界を、気づかせたい。
アメニモマケズに生きた人のように、
クラムボンのように。
はじまりの言葉。
ただの叫びかも知れない。
それでもいい。
音が音でなく、
言葉が言葉でなくなるまで、
何も聴こえなく、
何も見えなくなるまで
歩いてみたいんだ。
詠い人の道を。
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