眠る部屋/足立和夫
 
 歪んだ (会社) のなかで、不意
に犬のような沈黙を口に押しこめ
られた男は、夕暮、痙攣する肩を
抱え、部屋のおくへ潜っていく。
 床に転がった身体を覆うように、
いつのまにか、 (部屋) の呻く声
が、冷蔵庫の辺りから滲み出て、
・・・その死体の怠惰を病気のよ
うにくぐりぬけていく。
 そして、まどろむ朝を掴み、死
体を模して起きあがる振りをする
者が、当てにならぬ彼方を目ざし
部屋の夢を後にする。

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