君と九月と、あの空と/嘉野千尋
 
 遠くへ、とひとことだけささやく
  どこへとは訊けなかった
  さよならの代わりに背を向けた
  あの夏の終わりの、幼い恋
  


  戻らない夏が重なって
  いつか秋空に流れていくように
  僕らの小さな願いも流れればいい
  


  夕立が視界を一瞬灰色に染めて
  夏の最後は金色に染まった
  君を見送った夏の午後
  あの空はまだ晴れていた




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