日陰のふたり/たちばなまこと
初めてのつゆ入りを見上げていた日
雲を貫くプリズムに 神様の声をきいた
試練のときはいつか来るけれど
今日の良き日のあじさいの 透明な露を忘れないで
孔雀色の眼差しが十字架を射止めると
背負った罪が陽光に散って 白の裾を流れていった
父親と再び歩んだ道にも再びの終わりが来て
終わりと始まりの共有地に立ちながら
始まりの腕に 純白を放つ右手をゆだねた
幼子を日差しから守るように かくまっていた肌色のふたり
短い過去にも
狭い世界にも
誰かの内緒話にも
毎日怯えて 隠れてばかりで
氷の壁に閉じこもっていたけれど
健やかな世界も
病んでいる世界も
囲む世
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