調音 ?/木立 悟
雲の下を走る雲
他の縄張りに入った鳥が
遠い光の方へ追われてゆく
河口の上の空では
翼と音の狩りがつづく
灰の浪が灰の船まで到き
人造の水辺に虹の輪をひらく
暗く荒い金色の
ゆるやかなはばたきの森のなかで
名も無い星が星雲となり
有限と無限の手のひらへ還ってゆく
常に超えるもののある場所へ
風と地平と原と
見えない連なりのある土地へ
地から静かに立ちのぼる午後
銀色の光に生まれ出る笑み
雪あかりの丘をおりてくるもの
遠くへ遠くへ呼びかけるもの
最初で最後の日
何度も世界を映す滴
羽虫のような涙が
手のひらを 腕を伝い
目を閉じたもののまぶたへと
流れおちる
戻る 編 削 Point(3)