見られている/石川和広
苦労を取り戻す日々
網戸に半日も止まったセミをみる
見られている
セミの鳴き声に囲まれてそのセミは哭かない
なぜだろう
なぜ止まっているんだろう
網戸ごしにつついてみる。
死んでいない
足が微かに動いている
鳴かない
鳴かない
なぜ鳴かない
飛び出さない
静かだ
脳裏は静かではない
今までのこと考えている
現実は化け物で逃げ切れなかった自分
逃げようとして
逃げられなくて良かった
というところで不意にたたずんでいる
ここはどこ
セミは明日までいきているだろうか
短い命
自分の有限な生
見られている
何かが気持ちに
ああそれは
帰ってこようとしている
予感
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