落書きのある文庫本/たりぽん(大理 奔)
 
陽に焼けた黄土色の文庫本を開くと
なつかしいあなたの横顔が
鉛筆で、薄く描かれてていた

添えられた文字は
照れくさくって読むことは出来なかったが
横顔はまったく記憶の通り



喧嘩して別れた
原因は、もう忘れてしまったけど
描きかけのデッサンだから
色だけが鮮明だ

添えられた文字は
禁呪だったので読むことは出来なかった
横顔はいつもふてくされて淋しげ



仕方がないので
文庫本に綺麗なカバーをかけて
そう、ヒマワリ柄のプリントが入ったカバーをかけたら、
本棚の奥の方に差し込もうか
きっと、暗く渇いた暗闇
もうひとりの私が本棚の奥から手を伸ばし
陽に焼けて黄土色の文庫本を奪い取る




もう二度とわたしが
あなたの名前を
呼べないように



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