声をかける/岡部淳太郎
 

少しずつ
僕は君に声をかける

少しずつ
さらわれてゆく砂に声をかける
思春期の寝床で足首が痛む頃
君は青として濡れるだろう
それは特別なことではないのだが
誰もが楽な姿勢でくつろいでいる そのさなか
僕は君に声をかける

少しずつ
声をかける
君の青のままの姿に
少しずつ
声をかける
青いだけの海は
水平線の向こうで黙っている
それでもいい
少しずつで いい
僕は君に声をかける



(二〇〇五年八月)
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