きみに/竹節一二三
 
に入れるのを
やめてくれないか
きみはわたしの頬をつまんで
やさしく わたしはにんじんが嫌いなの とつぶやく
わたしはきみの皿に細かくたまねぎを移しながら
わたしはたまねぎがきらいだよ とつぶやきかえす

一緒に散歩をしてくれるきみへ
つないだ手をポケットにねじ込むのをやめてくれないか
とてもはずかしくて顔を伏せてしまうんだ
あんたの手は冷たいのよ ときみは笑うけれど
わたしははずかしくてたまらないんだ
お店の中ではぐれてしまったときに
大声でわたしの名を呼ぶのをやめてくれないか
だって聞こえないでしょう とふふんと偉そうな顔をして
きみはいうけれど
わたしははずかしくてたまらないんだ

けれどすこしだけ うれしいんだ

一緒に生きてくれるきみへ
いつも ほんとうにありがとう
きみがみていない場所でないと
こんなこと 恥ずかしくていえないんだ
いつも ほんとうに ありがとう
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