清流/千波 一也
 

蛍は
すべて
いってしまった



夏の巡りは
無限の軌跡をたどるが故に
どれもこれもが一度きり
この夏も 
その夏も 
あの夏も


わたしだからこそ 
歌える夏があり
わたしだからこそ 
歌えぬ夏がある


わたしの胸の温もりが
正しくうたに
解けたとき
許しの川は見えるだろうか

蛍の光をかたわらに


命の光をかたわらに



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