清流/千波 一也
 

わたしがむやみに数えるものだから
蛍はすべていってしまった


わたしが思い出せるものは
ひとつ
ふたつ

美しい光

いつつ
むっつ

美しい光

けれどもそこに温もりは生まれない

わたしはきっと
誤ったものに魅せられていたのだろう

蛍はすべていってしまった



あまい水 にがい水
わたしのなかには
静かに
密かに
渓流がある

あまい水 にがい水
天上の月は
おぼれるわたしを
鋭く
照らす



まことの川はすべての水をたぐりよせ
まことの川はすべての水をつつみこむ

蛍はすべて
まことの川へ

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