線のうた/木立 悟
立ちならぶ火の柱の前に
立ちならぶ木々
古い木々
影を浴びる水の子の
こめかみからうなじにかけてけだものは居て
道を流れる雨を見つめ
永い永い輪の上を
輪の外へ輪の外へとはばたいている
古い光が
消え去ることなく
なにかであるふりをすることなくそこに在り
球面を球面に描き写している
黒の上に
蝋で引かれた淡い線
からだをなぞり
庭から昇り
ひとときからひとときへ
笑みのかたちを伝えゆく線
午後の銀河の終わりとはじまり
空の色を言いかけて
ふと口ごもる子のまばゆさが
蝋のふちどりを燃してゆく
火にも木々にも従わず
道にかがやく影たちは
ゆらめく幾つもの行方のなかの
水と羽の足跡を見つめる
奏であう と
ひとつの線が応えるとき
意味とかたちと音は重なり
ひとつの色に燃えあがり
歩み去る背を染めながら
ふたつの生のうたを歌う
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