帰省/落合朱美
 

その声はむしろ誇らしげに聞こえた
おまえも変わらないでいてほしいと
呟いたあと慌ててそれを打ち消して
照れたように背を向けたのは
ふたりの未来を覚っていたからなのだと
今ならわかる 

あの日から
私はすこし泣き虫になったけど
泣いた分だけ強くもなって
今も変わらず貴方を想う
貴方の故郷の海もきっと
貴方の瞳に焼き付いたままの
変わらない色で
私を迎えてくれたのだろう

変わってしまったのは
そう 貴方だけ 

車はやがて
急なカーブの山道を登りはじめて
浜茄子の垣をもう遠くに見下ろしている
風の匂いは緑に変わり
その道は
貴方の眠る霊園へとつづく







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