わたしを憶える/木立 悟
 


わたしは
命ではないものの声を聴く
わたしをここに
わたしをここに置いてゆけ と


横倒しになったわたしの心
たったひとつの言葉に浮かび
たったひとつの言葉に沈む
横倒しのままのわたしの心


わたしは誰も連れてはいかない
わたしはわたしだけしか持たない
わたしは恐れ
わたしは気づく
わたしはどこにもいけはしない
わたしはここに置き去られたと


わたしは誰に置き去られたのか
わたしはわたしが見えないでいる
わたしはここにいるのだろうか
わたしはわたしのわたしだろうか
わたしをわたしにしているものは
わたしのなかにあるのだろうか


命ではないものたちは
わたしをわたしにつないでゆく
わたしをわたしに突き刺してゆく
つなぐたびに 突き刺すたびに
光はわたしを覆いまたたく


どこにも至ることのない音たちが
ここでとどこおる音たちが
着飾るように
剥ぎ取るように
倒れたわたしを憶えてゆく






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