法学/葉leaf
 
僕の産声が記録された「彼」との契約書はその図書館の書庫に保管されていて、年若い司書が年に一度は満月のような瞳で透視する。「彼」は夢の余白に生きる者。マントルの対流に身をゆだねながら、崩れゆく天蓋を支える者。僕は「彼」の発語の抑揚を知らない。
 僕は空におびただしい数の死んだ卵を見る。幻覚は水のように僕の感情をみたしてゆくので、現実という水は希釈され失われてしまった。僕には手の甲で日差しをさえぎることしかできない。

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