夜を往く火/木立 悟
流木が燃えている
岸のかたちに沿い
浮かぶように燃えている
遠い夜のかまきり
終わらない光を狩り
たたずむひとつの魂を照らす
たどりつけない梢の火が
月の左を照らしている
求めるものから遠ざかりながら
低い草へと燃えひろがり
新たな海への
ひとつの指標になってゆく
過ぎゆく象(もの)の精霊
交わらぬ道の精霊
夜の塵が
ひとつの光の轍を描く
ゆっくりと曲がり下る道から
浪が聞こえてくる
寄る辺なき神
寄り来る神
飛び去る最後の鳥を見送り
光と骨でできた生き物が
海から川へと還るのを視る
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