たまご/菅原 夕輝
 
悪しき手に触れられることなく
 その卵は
  産み堕とされた


卵は安らぎの温度の中で
 夢を見て
  眠っていた、

いつか目覚めれば消えてしまう
 淡い夢を
  ちいさな身体に刻み


 穢(けが)れの無い世界で
 何も恐れなどなかった。


「殻を壊せ」
  ―――誰かが言う

言われるがまま
 君が生まれゆく

  けれど、身をよじり 確かに

  自分の力で生まれゆく
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