喪失の、はるか前に/nm6
眠れない夜なら
突然に消えてしまうことにしましょう
ぼくらは明日には
トラックに轢かれてしまうのです
それは
きっとどこにあるか分からなくなった記憶より先に
肌からにじみ あふれ出す暖かさで
やわらかく包まれた春の
ぼくらはどこへ行っても もういないとして
電球がまぶしく目に残る夜に
こぼれる喉元を そんな想像をめくるめく
歩き出せばいいのです
喪失の、はるか前に
いま ぼくらの指先は動いています
足音はリズミカルなようにしています
きっとどこにあるか分からなくなった記憶より先に
それは浮遊した眠りを誘い
準備したままに 貼りつく午後のようでした
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