土塊に擬す/佐々宝砂
今は崩れし前方後円墳
色褪せ剥がれたる胡粉
古への熱狂と興奮
陰鬱に漂へる悲憤
見出されし死者は怒り
水気無き額に雨滴り
明かされし咒(じゅ)は空を撓(たわ)め
暁の海の歎きを高め
愛(は)しけやし姫と大君何処(いづこ)ならむと
埴輪の馬嘶(いなな)きて天地(あめつち)を響動(とよも)し
旗印翻り閃かす勲(いさをし)
眼を開くれば閑かなる夕暮
珍らかなる古墳無惨にも崩れ
冥冥たる古へも総て土塊(つちくれ)。
ソネットなのだから韻を踏んでみようとつくった旧作。
ソネットの正しい韻の踏み方を実践しているわけではなく、
踏み方はけっこうでたらめの習作。
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