無題/菅原 夕輝
夢見心地で聞いていた
彼方で 海鳴りが響くのを
まるで泣き声のように響き渡っていくのを
動き出した電車の向こうの 未だ明けない夜には
この囁(ささや)きが届いているのだろか
穏やかな鐘の音(ね)は 煩いくらいの波音に掻き消えて
誰も知らない 知る由もなく 今日が勝手気ままに行き過ぎようとしている
無意味の中に意味があるというのならば
日々 線を重ねていく現実の理由は虚しい
コンクリートの上 履き慣れた靴の裏に
形にならない想いを潰していく
指先から零れていく紅い血は
語り継がれる程 痛みを持ち合わせていない
夜はまた空白を作っては去っていく
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