冬の野/まんぼう
 
むこうの田のなかで
ごろごろ転がしている
しろいのが白鳥です
ほらよく見てごらんなさい
稲の切り株のあたりで
落穂や二番穂をむさぼっています
あのやさしげな長いくびは
あなたの腕のようです

いちばん思い出すのは
こんなくらい空の下
じめじめした畑で
白菜や蕪が腐って
いく臭いです
うすいゴム長が少し沈んで
素足がじんじん冷えてきます
なぜ
あんなになんでも無い事を
覚えているのでしょう

海のほうはあんなに黒い雲だ
くっきり水平に明るいものを
押さえつけています
でも
心の中がぷつぷつと発酵して
なにか温かくなるのは
こんな野原にいるからです

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