草棄原/木立 悟
空をゆく流氷が
原に立つ子の瞳に映る
旧い川が運ぶ黒い土
小さな光の波
いつの日か原に
何本も土の柱が立ち
やがて次々と倒れ
原を埋めていった
原はうねり
風にかたちを与えつづけた
埋もれていく自分自身へと
聞こえない音を運びつづけた
冬の白い黄金を過ぎ
川が様々なものを分断し
すべてが忘れ去られたあとで
棄てられた人々が集まり村を作った
中洲を拾い集めたような
草に見え隠れする村を作った
川底が黒くなってゆく間も
村を訪れるものはなかった
刈り手もなく草は高くなり
人々は見えなくなっていった
土の柱はくずれつづけ
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