自由によって運ばれてくる/鳴々門 零
眠りの端を吸いつけるように
鳧(けり)が清らくついばみを走らせた
マディソンという街の
澄んだ蒼にきらめくのは
寝起きを押しのけた海兵隊の
ブルースが舞う
うえの空の快(こころよ)い空気の一面でも
踊りに苦しむ
下界の嘆きはまじわれない
犬も猫も
そこでは目を瞑(つむ)るしかない
選択した眠りは
ふりをする偶像になれること
主(あるじ)が命のためにも
施すとき うえの空の響きが
閃光となって
澱(よど)んでいるのを貫く
鳧が圏(かこい)とのあいだを
思い残すこともなく身を振るわせる
楽しさのまなざしは
自由によって運ばれてくる
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