カワガラス/コンパス
 
まるで花筏みたいに俺たちは
カヌーで石狩川を下った
川岸の枯れ草に沿うように
滑空するように水平に飛んでいくカワガラス
めずらしそうに俺たちを見てそいつは挨拶をした
水辺に住むというだけで
山里のハシボソや都会のハシブトと違う
高い山のホシガラスでもない
ビスビスジョイジョイ
チョコレート色で
川の上流の滝の裏に住み着くというお前が
水底のカゲロウを食べながら生きているなんて
誰も知らない
だけど、まるで都会の川を流れるタクシーのように
我々を何かを確実に運んでくれる
カラスの中で水底の生き物を食べているのは
お前しかいない
それでもあくまで、水平に飛んで
飛び方がハシブトみたいに鋭角的でなく
一回り小さいお前が、あくまで速く水平に一直線に飛ぶことが
俺の救いだった

だけど、世の中は
ハシブトガラスとハシボソガラス
カワガラスの区別なんてわかりはしない
塵を食う動物くらいにしか思っていないのさ


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