ビオトープ/望月 ゆき
 
深くまでつづいている
いつか見失った道の先にある、森で
夏の日
ぼくたちは、生まれた


頭上には空があった
ぼくたちと空の間を通り過ぎてく風があった
ふりそそぐものは、光
光とも見まごう、まぶしい未来
ぼくたちは歩き出した
手をつないで
どこに向かうかなんて決めてなかったけど
それでよかった


立ちどまることを忘れてぼくたちは
屋根までつづくツタをのぼったり
ときどき
追いかけてくる雨雲から逃げて
猛スピードで走った
空はいつも青いわけじゃなく、風は心地よいばかりではないと
いたずらに知らされた


未来からはみだして、
世界から隔離されたと
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