薄灯りはまもなく消える/千波 一也
 

紅さし指で
この唇をなぞっておくれ

宵をにぎわす祭りの夜に
提灯ゆらり


光はたぶんに
正しいものだけ捕まえる
ほら
燃える可憐な蛾がひとつ

短命ながらも風情をもって
正しいものへと
主人を招き
提灯ゆらり


紅さし指で
この唇をなぞっておくれ


まもなく花火は上がるだろう


大輪の菊は
その肩のために咲くのかも知れない

艶やかな華ほど
摘み取られてしまうのだから
そんなに飾りたてても
菊花が映えるだけ

まもなく花火は上がるだろう


浴衣を脱いで
こちらへ
おいで


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