追想と花火/紫乃
 



       八月二十七日 午前三時


     ひっそりと聞こえる祭囃子や
     遠くであがった花火に
     いつでも僕らの世界は置き去りだった
     それでも
     窓辺で揺れる風鈴が
     ちいさく鳴くのを、泣くのを
     知っていた


     毎晩眠るたびに
     恐ろしくなったり
     許された気になったり
     彼女に
     明日という日は存在していたのか
     もっと話をしたかった


     戯れに大人の置いていった
     線香花火に
     誰かが云ってしまうかもしれ
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