新訳『星の王子さま』レビュー〜倉橋由美子さんの遺作/角田寿星
するところのメタフ
ァーは、枝葉末節にすぎないと思うんだよね。
『星の王子さま』は、ひとつの奇跡である、と思うんです、ぼくは。
サン=テグジュペリという、どっちかつーと骨太な男のロマンを感じさ
せる佳品をモノしてきた作家が、どーして挿絵まで描いて、この美しい
物語を書いたのか。その奇跡とも言える出会いのことを思うと、ぼくは
涙を禁じ得ない。こんな幸福な出会いはない、と思う。
内藤濯さんの訳は、もしかすると原文には忠実ではなくて、日本人らし
い感傷に満ちあふれたものであったかもしれない、って思いもあるには
あるんですが、ストーリーの順調さを犠牲にしても、ひたすら文章の美
しさを追求しようとした、そんな作品であったように思っています。
ぼくは川の向うにむかって叫ぶよ。
「倉橋さん、アンタはなんも分っちゃいねえ」って。
大いなる愛情を込めて。
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