訪れ/木立 悟
 



雲へと落ちる風を映して
紙の鏡はひるがえる
ひらくと赤い白たちの
左が暗いまなざしの
うすく小さなかがやきたち


雨にまぎれてそこにたたずみ
雨にまぎれてただ鳴りひびく
水音よりも濃い音が
滴を滴に引き寄せる


昇る水 降りる水の重なるところ
異なる流れのにおいから
光の熱さ 冷たさは訪れ
目を閉じるものの手に触れる


蛇の尾がすぎ
蛾の羽がすぎ
雀を追いかけ
鴉たちがすぎ
小さな手の指
足の指がすぎ
金や銀のかたちを散らして
閉じた目の上をすぎてゆく


音の重さ
光の重さ
ひとつひとつ触れにきて
肌の奥に泣くまるみ
微笑むまるみを確かめてゆく


窓の姿をほどくまばゆさ
次々とまぶたにこぼれ落ち
流れては音の足跡をひたす
粉や羽や鱗で描かれた
小さな訪れのしるしをひたす






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