銀の月/椎名乃逢
肌を突き刺す風に
たまらず上がる水蒸気
明日には霧になるでしょう
そんな湖面に私は
足を踏み入れ波を立てる
私を照らすその月は銀色に光って
見て、あなたに映えるように
白い薄いワンピース
それだけを纏って逢いに来た
水面に映るあなたはゆらゆらと歪んでる
そんなあなたを踏みつける
これで壊せてしまえたらいいのに
でも水面はやがて静けさを取り戻し
あなたもまた 涼しげな顔で元通り
偽物のあなたさえ 壊す事ができなくて
見上げれば
そんな私を黙って見ている
銀色の月
ねえ、どうして こんなに私の手は
あなたに届かない
髪も乱してもがく私を
嘲笑っているの? 見守っているの?
ただ黙って
淡い光で包み込むだけ
壊しても壊しても
私にあなたは侵せない
それどころか その光は私の瞳を
支配して離さないのね
偽物のあなたとでも
一緒に溶け込む事ができるのならば
今ここで、水に沈もうか
あなたに照らされたこの
湖に手足投げ出して
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