良かれ、とついた嘘/千波 一也
 

少女のために
空き地のために
泥靴のために

良かれ、とついた嘘


自分の肩幅も
かえりみず

良かれ、とついた嘘



あの頃は
そうでもしなければ
苦しくて



自分の足でも踏み潰せそうなものを
置き去りには
出来なくて



良かれ、とついた嘘は
毎夜の潮騒

治りかけの傷ほど
かゆくてたまらない


良かれ、とついた嘘は
毎夜の潮騒


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