きおく/八月のさかな
 
泣きそうになったこととか
そのおもいとか
もらったことばとか
なんだか忘れたくないいろいろなものが
あふれだしていくのがむしょうにさみしくて

消えてしまいそうな感動を
すこしでもあたしのなかにとどめておきたくて
気付いては書き留めておく
そういうことをずうっとしてきたけれど
メモ帳はさいきん
取り出されることがすくなくなった

おもいだす、ことも
とてもやさしいしあわせな作業ではあるけれど
どれだけのよろこびやかなしみがこぼれていったんだろう
そうおもうと
ふいにこの 記憶 といういれものが
ものすごく恨めしく思えたりして



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