グラス/つぐこ
全て、捨ててしまえ
いいとも、それがあなたの望みなら
そういって、綺麗なグラスを手に取り
あたしはグラスを壊した
壊れた破片が宙に舞う
あぁ、なんて綺麗なのだろう
美しすぎて、言葉が見当たらない
小さなグラスから奏でられる
その泡沫夢幻の光景に
あたしは黙り込んだ
その光景の一部になりたくて
手をその光景の中に
入れて
グラスの破片を掴んだ
痛い、痛い、痛い、痛い
そう、感じて手を見た
あたしの手は真っ赤に染まって
何かを思い出してくれそうな色だった
痛いって感じることが
生きてるって事を思い出してくれて
無意味で無力で虚ろな世界にいる事が
何よりも痛い
呆然と立ち尽くすあなた
床に落ちる破片
手から落ちる血
破片の上に落ちた血
そして、あたしの影。
完璧。これであたしも
光景の一部になれた
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