やわらかなくうきをひろげながら/紫乃
 
街の中心
その、少したかいところ

高架化されたせんろの上を
古びたでんしゃがはしる
ねむいからだをはこびながら
きみのすむ都会から、とおいまちへ

眼下にひろがるまち
せなかには洛陽
あかくそまる
まちはうみのように

だいぶかわったけしきから
すこしだけなつかしいくうき

  かたん、
      ことん


 (せんろの高架化がすすんで、
  もうこのあたりには踏み切りがなくなってしまった
  なつの夕方、電車がしかいをさえぎる瞬間の
  もうろうとした感じがすきだったんだ)


ひとのいないでんしゃ
ノスタルジーはかそくして
しずかに集束へとむかう

あかねにそまった電車と
ゆめうつつのからだ
らくようのまちを
すべるようにすすむ
そのすこしたかいところを
しずかに

  かたん、
      ことん





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