受刑/AKiHiCo
 
屋で待機していて下さいな」
 機械的な声でその女性が僕の手を引く。左の女性にも引かれながら僕は長い確かソファしか置いていない通路をゆっくりと歩き出す。女性の細く薄い手の感触。ひんやりと冷たく感じるのは此処が寒いからだろうか。カツカツという靴の音が輪唱しているかのように耳に響く。
 部屋に入れられ、ドアに鍵をかけられた僕は床に座り込んだ。気が付けば持っていたはずの単行本が消えている。冷たいコンクリート。
 溜息と共に、なぜ僕が処刑されなければいけないのか考えた。答えは浮かんでこない。浮かんでくるのは、つい最近の出来事。僕は何も判らないまま、このまま、刑を受けるのだろうか。
「なぜだろう……。全ては流れのままに、か」

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