俵松シゲジロウの倦怠/みつべえ
た。
そこからは人垣の向こうの騒ぎが手に取るように見えた。警官と消防士が弥次馬を規制するなか、蜜柑色の防火服を着用した男たちが自動販売機を包囲していた。
「もう駄目だ、死んでしまう! ああ、こんなに血がっ! 手遅れだ、死んでしまうっ!」
酒屋のオヤジは錯乱しているようだ。
トモコは息をのんで、その光景を見詰めた。
弥次馬の騒めきを突いて、レスキュー隊員の一人が大声で叫んだ。
「焼き切るしかない! バーナーを持って 来い!」
すると他の隊員が群衆を押し分けて特別車両まで走った。
みんなの目がそちらの方に向けられた時、弥次馬の輪の内側に、あのバスの運転手がひょこっと現れ
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