火冠/木立 悟
失われた約束が
気づかぬうちにふたたびつらなり
忘れられたはじまりを
さざめくように呼び覚ます
降り積もるなか見えてくるもの
わたしを明るくかきむしるもの
願いを終えた願いとともに
小さく粗く打ち寄せるもの
海と枝と火の重なりに
見え隠れする白い冠
しあわせであれ しあわせであれと
うたう冠
ざらざらとした羽音に満ちた
蒼と灰の流れに手を入れ
わたしは肌の明るさを見る
わたしに打ち寄せ 爆ぜる火を見る
かがやく狭間が手わたされ
手のひらを腕を流れては咲く
とどまることなくそそがれるまま
散りつづけては咲きつづける
とりとめもなくかがやきを抱き寄せ
わたしはひとり冠を見る
重なりのなか はじまりのなかを過ぎてゆく
遠い遠い冠を見る
戻る 編 削 Point(3)