『傷痕』/しろいぬ
抉れた傷痕は埋まらない
唇を 強く 強く 強く押し当てても
血は滲み
焼け付いた傷痕は僕を責める
血を混ぜた唾液の味に
君は少し微笑
とろん と
目を惑わせて掠れた声で何か呟く
それは弱弱しく大気を震わせ
唇の辺りで溶けて 消えた
言葉に意味はない
綺麗な言葉で傷痕を撫でてみても
虚しさは埋まらない
ああ 僕らは独りだ
陳腐なぼやきにも意味はない
穿たれた傷痕は脳味噌を苛み続ける
埋まらない空虚は全身を朱に染める
痛くないように
痛くないように
言葉を滑らかに磨いて
想いのせて傷痕に口づけても
世界はなにも変わらない
痛みは 消えない
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