『雪の降る町』/mana
ひらがなを覚えたのは
褒めてほしかったから
泣かなかったのは
泣けなかったから
望まないのは
叶わないのが怖かったから
受け入れられないのが
受け止められないのが
拒絶されるのが怖かったから
あなたがずっと書き続けた
私とは違うあなたの苗字
愛した人に
愛されていたのではなかったのですか
男に
帰るところがあることが
愛のない証だと思うなら
どうして奪わなかったのですか
それは私がいたからですか
それとも
手にすることが怖かったのですか
あるいはまた失うことが
本当はいつも誰よりも
愛されたかったのではないのですか
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