羽のはえた籠/木立 悟
 
 


見わたすかぎり
群青の花が咲いている
鉄を打つ二つの人影
冷気が恐怖をはらい
からだを重くする
静かに笑み
花のなかに
降る水の暗がりに
はじめて地を踏むように立つひと
誰よりも強いひと
誰よりも悲しいひと


目を閉じるしかない光の迷路で
冬の道のまんなかで
とどかないものを燃やした
火も 心も 狼煙も
何も信じられないまま
熱の行方をあおぎ見ていた


わかりあえるはずのもののなかでわかりあえずに
いつのまにかたどりついた原で
草のすべてに伏していた
夜の光の下で
抱きしめると同時に
抱きしめられながら
泣いていた


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