からっぽ/恋月 ぴの
失っても気にはしなかった たとえ何かを失っていたとしても 気にすることなく 明け方まで友と飲み歩いた ゴールデン街のお店を這出ると 朝の日差しがやけに眩しくて「太陽がいっぱい」だなんて 的外れに大声で叫んでは 友に大笑いされたっけ
新宿通りの古いビルの出入り口 守衛に追い払われるまで 寝ぼけ眼で座っていた お尻の財布にも ポケットにも 小銭すら入っていなかった それでも日々は確実に輝いていたし 将来の夢についてなら一晩中だって 友と語り明かすことが出来た
何時頃からだろう 少しづつ僕の中で何かが変わった いつもの街なのに何故かよそよそしく 馴染みの店がいつの間にか シャッターを下ろして
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