ついの宿りは/佐々宝砂
最初の舞台は私の家の玄関先
(もう三十年も前に植えたという)
ダイダイの木の濃緑の葉に
まんまるな卵が産み付けられたのは
風薫る五月の午後
うるる。るる。うるる。
あったかい。
おいしい。
おなかへった。
はっぱ、いっぱいある。
たべよう。たべよう。
うるる。るる。うるる。
たくさん産まれた青い芋虫たち
立派な黒い羽に赤い模様をつけて
空飛ぶ日がくることをゆめみて
食べる食べる食べる食べる
食べて肥えて
その身体に一匹の蠅が狙いをつける
ふん。ふんふん。ふぷい。
あたしはりこうではやいんだ。
おしりのさきまできのうてき。
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