靴 〜マンションの階段〜/コンパス
?
そんなもんじゃないよ。わかった。
もう少し、余裕あるから明日正式に見積書もってきて」
「はい、よろしくお願いします」
・
玄関口に行くと
やっぱり自分の靴が見当たらない
どうしよう
帰れない
知らん振りして
さっきの靴履いて帰ろうか
・
そこへスタスタスタとあすなろ建設の監督
憮然とした表情で
「その靴、俺の」
よく見ると玄関の端っこに
今日はいてきたサンダルがあった
「faxもあるけど、鏡つけて持ってきて」
「よろしくお願いしま〜す」
・
その日、俺は久しぶりの現場で頭が混乱していた。
サンダル履きだったのに靴と間違え、
その上、監督の靴を履くなんて。
俺はもう一度、花壇の植え込みを見た
そして棟へ上る監督を見上げながら
何だか妙に幸せな気分でサンダルを履いてうちへ帰った
戻る 編 削 Point(2)