自己の言語回路からの自由へー九鬼周造著『日本詩の押韻』私解ー/狸亭
まだ若かった三十年前、薄っぺらいクラシックラルースをテクストに辞書と首っぴきで
ランボーを読み、痴がましくもその全訳を夢見たものだったが、十歳の少年が「金利生活
者になりたい」などと書いているのがどうにも判らなかった。まことに遅まきだが今頃に
なってブルトンを読み、「自由」への熾烈な欲求、「労働」に対する拒否、嫌悪の伝統を
理解した。フランス語の「トラヴァーユ」の源流であるラテン語の原義は「拷問」である
という話をきけば、ようやっと腑に落ちるのである。
簡単な話だ。人生は短く、一日は二十四時間しかないのだ。人間は宿命的に制限の中で
しか生きられない。個体としての時間、空間と
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