夏の日 一/龍二
虫の声がそこかしこで聞こえる。透明の日の光が木々を潜り抜け降り注いでいる道を通ると、もう白いシャツはじっとりと汗で湿り出す。前髪が額に張り付くのを指で払いながら、一歩一歩前に進んでいくと、小綺麗な堂の門がある。その門を潜ると、もう朝のチャイムが鳴り出し、少し歩調を速めて、その建物の中に入っていった。毎日ここに来て、何故か毎日ここに座り、数時間を過ごす。その間に妙な事をたくさん経験する。僕には人が分からないので、どうしていいかは良く分からない。
「空気」と声をかけられる。空気とは僕の名前らしい。本当の名前はよく思い出せない。「空気の机、何か臭い」と言われたので、僕は机の中を見ると、鼠の死骸
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