空をじょうずにさわれない/八月のさかな
 
いつか、白い雲に乗ってどこまでも旅する夢をみた
ふわふわのその乗り物は 
ちぎって食べるとおさとうの味がする

あのころ
月の大地にはうさぎが
花のつぼみには妖精が
虹のふもとには楽園が
本当にあるのだと知っていた

いまはもう 忘れてしまったほんとうのこと

わたしはいつからおとなになって
いつごろそれを知るのだろう
空をじょうずにさわれなくなった両手をみつめて
ふと、そんなことを考える

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