2005・7 雨の終わりの日記/千月 話子
この世界には もう
ひとつも乾いた場所など無い と
そんな風に思うほど
360度 水浸しの溢れ出る水槽です。
窓を開けると 外は白い縦線で埋まる巨大な水鏡で
映った私の全身から さらさら と流れ落ちる水分が
もう 70パーセント消えかけて
さよなら と手を振る暇もなく
その手の平から流れて 流れて
どこかの水底へ 涙ごと連れて行くのです。
窓を閉じて 部屋の奥へと逃げ行く私の
体に纏わり付く 水 すくっても すくっても
喉の渇きは 治まらなくて
足元から ひたひた と流れ行く体水が
表面張力をもって 楕円に固まる
幽霊ならば簡単に ス と消えて
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