沈黙の星座/塔野夏子
誰もいなくなったプラネタリウムの
暗いドームの下
まるで其処が聖堂ででもあるかのように
ひざまづいて祈る影がある
何を何故祈るのか
誰にも知られることなく
ひとりきり目を閉じて
長いこと祈りつづけている
けれど彼は
気づいてはいない
光らなくなった星たちが
ひとつまたひとつと降りてきて
彼が祈っているあいだじゅう
まるで守るかのように
その頭上をめぐりつづけていることを
やがて祈り終え
彼が立ち去っても
星たちは祈りを引き継ぐかのように
しばらくそのまま めぐりつづけていることを
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