道の途中/岡部淳太郎
から奔り出ることはなかった
日はもはや
われわれの背を照らすことはなかった
そのためにわれわれの影は
他人のように背後からわれわれ自身を脅やかす
箸を取って食み
靴を履いて歩く
ただそれだけのことが
われわれにあり得ない永遠を見せる
奇妙にも
せいいっぱいはりつめる筋肉
奇怪な
棒のような日々
人に思い出されることのない
人に思われることのない
途中の旅だった
曲り角にさしかかり
土踏まずは道の声を聞く
昔年の
石の形をした小さな声
誰もがみな
旅の途中だった
そして誰もがみな
人に知られることなく静かに
消えていった
未完連作「道祖神」
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